02 6月 フェリペ・リボンと関口涼子 Felipe Ribon et Ryoko Sekiguchi
フェリペ・リボンはデザイナーで写真家。ナント国立高等鉱業学院で学んだあと、フランス国立高等工業デザイン学院(ENSCI)に入学し、2008年に同校を卒業。2009年にはパリ市デザイン大賞を受賞したほか、デザインと衛生と環境の間の均衡に形を与えたプロジェクト「Une autre salle de bain/もうひとつの浴室」でヴィラ・ノアイユのデザイン・フェスティバルで観客賞に輝きました。2012年にはアウディ・タレント・アウォードを受賞し、そのおかげで2013年に初個展を開催し、催眠プロセスを引き起こし、感覚対象との新たなつながりを可能にする一連のオブジェを発表しました。
関口涼子は日本の作家・翻訳家。ソルボンヌ大学で美術史を学び、東京大学比較文学比較文化博士課程を単位取得退学。フランス語で12冊ほどの作品を発表し、主としてP.O.L.社から出版しています。その中には『 Ce n’est pas un hasard (仮題:それは偶然ではない)』(2011年)や『Le Club des gourmets(仮題:グルメ・クラブ) 』(2013年)があります。日本語では、10数冊の本を主として書肆山田から出版。また、ステファン・フェンキノス、エマニュエル・カレールやジャン・エシュノーズなどの小説を日本語に翻訳しています。
ヴィラ九条山におけるデュオ・プロジェクトは「 L’Ombre de la nourriture/食べ物の暗部」と題され、複数の媒体(テクスト、写真、オブジェなど)を駆使し、私たちの食事の目に見えない部分を巡る考察となります。このプロジェクトには2つの柱があり、その1つは遺伝子組み換え作物、添加物、化学肥料などに対する恐れ、不安や嫌悪感など、食品のきわめて重要な役割と矛盾した要素です。もう1つの柱は食事に《本質的》に関連してはいるが、その自明の理は見せかけであるかも知れない、味覚、感覚や動作などの要素を集めたものです。 このプロジェクトは食べ物を3次元的に観察し、その闇の部分を探ろうとする試みと言えるかも知れません。ここで日本がリサーチの場として欠かせないのは、高級料理の国というイメージと食品を巡る昨今のあらゆる危惧の縮図の間で日本が体現しているコントラストのためにほかなりません。