08 3月 セバスチャン・プリュオ Sébastien Pluot
セバスチャン・プリュオは美術史家、研究者にしてインディペンデント・キュレーター。また、国立高等美術デザイン学院TALM(ESAD TALM)とパリ・セルジー国立高等美術学院(ENSAPC)の共同プログラム《Art by Translation》の共同ディレクターも務めています。アリソン・ノウルズ、メル・ボックナーやクリストファー・ダルカンジェロの作品を巡る数多くの展覧会やシンポジウムの企画に携わったほか、「Art by Telephone – Recalled」「Time Capsules 2045」「The Intolerable Straight Line」「Dernières nouvelles de l’Ether/エーテルの最新ニュース」「Une lettre arrive toujours à destinations/1通の手紙はいつも複数の宛先に届く」「Double Bind」「Arrêtez d’essayer de me comprendre/私を理解しようとするのはやめてください」などのグループ展のキュレーターも務めてきました。また、客員教員としてバーナード・カレッジ、カリフォルニア芸術大学(CalArts)、ニューヨーク市立大学(CUNY)、テラ財団サマー・レジデンシー、サンフランシスコ芸術大学(SFAI)、ソルボンヌ大学で講義を行ったほか、コロンビア大学、フロリダ大学、ニューヨーク大学(NYU)、プリンストン大学、現代アートセンター《RedCat》、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)、ポンピドゥー・センター、ジュ・ド・ポーム国立美術館、フランス国立美術史研究院(INHA)、ジュネーブ造形芸術大学(HEAD)などで講演会の企画や講演を行なっています。現在、セバスチャン・プリュオは美術史研究機関《アンドレ・シャステル・センター》の研究員(博士課程)、ブリュッセルの高等美術研究院(HISK)の2023年度プログラムのコミッショナー、そしてパリの宇宙素粒子・宇宙物理学センターのレジデント研究員を務めています。
偶然性に対する感受性
極度の現代性と共存する日本の伝統文化は、偶然性に対する特異な美的対処方法を、不測の事態、制御不能なことや不確定なことと折り合いをつける能力を備えています。リサーチの対象となるのは、命あるものやモノとの様々な共生関係であり、それは現象を手なずけ、制御するというよりも、むしろ偶然事をうまく切り抜けようとするものです。こうした手はずは、襤褸、金継ぎといった工芸的手法や、さらには微生物による選択的発酵を用いた料理法に見ることができます。リサーチアプローチが目標とするのは、場所、モノや命あるものに対する感受性の危機や注意と共感の欠如と符号する環境・気候危機に立ち向かうための手段を特定すること。こうしたアプローチは、サダキチ・ハートマン、ジョン・ケージ、塩見允枝子、一柳慧、オノ・ヨーコ、志賀理江子やデヴィッド・ホーウィッツなど、日本人に限らず、日本文化に影響を受けた工芸家やアーティストの仕事との関係で進められることになります。
写真キャプション
- 画像: 塩見允枝子「スペイシャル・ポエムNo.2」に対するジョセフ・グリゲリーのリポート
「Une lettre arrive toujours à destinations/1通の手紙はいつも複数の宛先に届く」展、現代アートセンター《La Panacée》、2014年。キュレーター:セバスチャン・プリュオ
「2014年7月18日午前9時、シカゴ:私はシカゴの自宅に居て、コーヒーを飲み、『ニューヨーク・タイムズ』を読みながら、丁度1週間前に、ニューヨークのオーセイブル川の中に立ち、浅瀬でマスの投げ釣りをしていた場所に居たいものだと思っていた」 ジョセフ・グリゲリー
- 画像: 偶然性の検討
デヴィッド・ホーウィッツの植物、ニナ・サフェニアの陶芸作品、サダキチ・ハートマンの肖像、マルセル・デュシャン「自転車の車輪」「パリの空気」、アリソン・ノウルズ「A House of Dust」
- 画像: 塩見允枝子「スペイシャル・ポエムNo.2 – フルックス・アトラス」。デザイン:ジョージ・マチューナス。
- ポートレート: S.プリュオ、撮影:ニナ・サフェニア。