02 2月 ニコラ・ピノン Nicolas Pinon
エコール・ブール国立工芸学校で家具製作を専攻し、
2001年に卒業したあと、ニコラ・ピノンは伝統的及び現代的な仕上げ技術を習得することに専念。素材と間近で向き合うリサーチを通して日本の漆の特性を探るうちに、バルセロナの美術修復高等職業学院(ESPAR)で漆芸を専攻することになりました。
その後、漆芸・古美術工房「アトリエ・ブリュジエ」に入り、
世界各地のプロジェクトに携わることで装飾の修復と製作の腕を磨きました。2006年からは定期的に来日し、漆芸家・大西長利の下で見習いとして働き、乾漆という古来の技法について教えを受けてきました。2013年以降、ニコラ・ピノンはコラボレーションにおいてもリサーチにおいても日本の漆だけに専念しながら、新しいテクノロジー、3Dプリンターによる柔軟性に富んだ支持体の製作や漆工品のレーザー彫刻も取り入れています。
2020年には、デザイナーのディミトリー・リンカとの共同プロジェクト《エントロピー》で「手の賢さに捧げるリリアンヌ・ベタンクール賞®」の「ダイアローグ」部門に入賞。これは可搬式の軽量な暖房器で、その外観は温度波を表したデザインとなっており、温度の変化に応じて漆も色を変化させます。
ヴィラ九条山での滞在中、ニコラ・ピノンは環境に配慮した素材や繊維を巡るリサーチを通して、サンプルの開発に努めます。日本ではまた、温度変化に反応するサーモクロミックな漆の探求と応用にも続けて取り組
みます。
ニコラ・ピノンが独自に開発したこの斬新な技術は、日仏工芸アーティストの共同プロジェクト「Savoir-faire des Takumi」において開始された交流の継続を図ることで、日本の製造業者や工芸家との新たなコラボレーションを立ち上げる端緒となり、新しいプロジェクトの実施が目指されます。
ヴィラ九条山とベタンクールシュエーラー財団との2つ目のパートナーシップとして、2022年から、毎年2人の「手の賢さにささげるリリアン・ベタンクール賞®」受賞者が、ヴィラ九条山に1ヶ月間滞在することになりました。
滞在中、彼らは自らの技を、日本文化の中で発展させることになります。
彼らは、ヴィラ九条山の従来のレジデント達とは立場は違いますが、彼ら自身で、改めて、アンスティチュ・フランセによるレジデンスプログラムに、ソロ、二人組み、またはデュオで応募することも出来ます。
ベタンクールシュエーラー財団、アンスティチュ・フランセ、ヴィラ九条山は、この新たなパートナーシップによって、より一層、フランスの工芸の普及 、そして日仏2国間での対話の促進に取り組めることを、嬉しく思っています。
Crédits photos :
Portrait : Sophie Zenon
– Entropie, crédit Etienne Lobelson
– Service à thé Tipô