13 3月 グレゴワール・スカラブル Grégoire Scalabre
グレゴワール・スカラブルの創作活動は、轆轤を回してひとつひとつ手作りされたミニチュアサイズの磁器壺を集積するという原理に基づくもの。こうした方法で創り出された大型作品は、その表面に配された無数の要素から成り立っており、秩序と混沌の領域の間で揺れ動いています。ごく小さなものから巨大なものへと移行するスケールの変化を活かした作品は自然と結びついており、秩序、混沌、極小性や無限性を表しています。
グレゴワール・スカラブルは2010年にセーヴル磁器製陶所でレジデンスを行い、その際にミニチュアサイズの壺の集積を巡る仕事に着手。2011年にはパリの装飾芸術美術館で「Astrée/アストライアー」と題された作品を発表。彼の作品はゼーヴル磁器製陶所のほか装飾芸術美術館の常設コレクションにも収蔵されています(「Sôane/ソアーヌ」2020年)。2022年には、「Ultime Métamorphose de Thétis/テティスの最後の変身」と題された作品で、ベタンクール・シューラー財団主催「手の賢さに捧げるリリアンヌ・ベタンクール賞®」の卓越した才能部門で受賞。2023年には、ロワール川沿いのショーモン城(Domaine de Chaumont-sur-Loire)での作品展に出展。
ヴィラ九条山でのレジデンスに招聘されたグレゴワール・スカラブルは、その作品において自然の概念を深めたいと考えています。つまり、《ホワイトキューブ》とは異なる環境において自作の彫刻の間の照応関係を生み出すこと、(ミニチュアまたは別のフォルムの)集積により溶解するフォルム、または風景の一要素を際立たせるフォルムを作り出すこと、自らの仕事を、何らかの形で、自然に再統合すること、あるいは自然に《戻す》ことが目指されます。
そこで、日本滞在は自然と美術の歴史を巧緻に絡み合わせた日本文化が提供する可能性を探求する機会となります。まず、春のバラ色、秋の赤黄色やだいだい色など、日本の四季のくっきりとした色合いを用いて、グレゴワール・スカラブルは色彩や植生(苔など)を作品に取り入れること、自然、人の魂や諸行無常を象徴する日本の庭園文化から着想を得ることを目指します。
ヴィラ九条山とベタンクールシュエーラー財団との2つ目のパートナーシップとして、2022年から、毎年2人の「手の賢さにささげるリリアン・ベタンクール賞®」受賞者が、ヴィラ九条山に1ヶ月間滞在することになりました。
滞在中、彼らは自らの技を、日本文化の中で発展させることになります。
彼らは、ヴィラ九条山の従来のレジデント達とは立場は違いますが、彼ら自身で、改めて、アンスティチュ・フランセによるレジデンスプログラムに、ソロ、二人組み、またはデュオで応募することも出来ます。
ベタンクールシュエーラー財団、アンスティチュ・フランセ、ヴィラ九条山は、この新たなパートナーシップによって、より一層、フランスの工芸の普及 、そして日仏2国間での対話の促進に取り組めることを、嬉しく思っています。
Crédits photos :
Portrait : Anthony Girardi
– Ultime métamorphose de Thétis, crédit Anthony Girardi
– Cygnus
– Achille
– Akantha, crédit Gaetane Girard