02 2月 モナ・オレン Mona Oren
過去20年間にわたり、デッサン、写真、ビデオ、インスタレーションという変幻自在の表現活動を行なってきたモナ・オレン。そんな彼女の創作活動の拠り所となっているのが、彫刻です。2018年に「手の賢さに捧げるリリアン・ベタンクール賞®」に入賞したオレンは、アーティストとしての創作活動の中で、鋳造と成型の専門技術を磨いてきました。これまでは、自然や植物の世界からインスピレーションを得てきましたが、近年は、より抽象的で、彼女のパーソナル・ヒストリーを掘り下げるような作品へと進化しています。2022年には、ヴィラ九条山に1か月間滞在し、日本の櫨蝋(ハゼロウ)に関するリサーチに着手しました。希少な櫨蝋との出会いは、彼女にとって揺るぎないインスピレーションの源となりました。オレンの作品は、フランス国内のみならず、世界の美術館やギャラリーで展示されています。
櫨蝋(ハゼロウ)という名の宝物
無常性と記憶が織りなす感情の塊。その繊細さが白い蝋で表現されたのがモナ・オレンの作品です。オレンが好んで使用する蝋。彼女にとって蝋とは、単なる物質ではなく、生きた素材です。日本の櫨蝋と初めて出会った2022年、職人の使用する道具とその職人技が、パリのアトリエで見慣れたものと似通っていることに心を奪われたオレン。櫨蝋という新しい蝋の形に突き動かされ、植物性の蝋というユニークな素材に彫刻を施す方法を探るために、様々な実験を行いました。2025年のヴィラ九条山レジデンスでは、櫨蝋とその原料であるハゼノキの世界の探求を続けます。そのほかにも、日本特有の物質であり、錬金術のように未知数の可能性を持つ米蝋、和紙、固形墨も取り入れたいと考えています。鋳造技術を用いて生み出される一連の作品は、完成形のみではなく、その原料となる人工物を制作工程の一部として見せることで、その工程に宿る詩心と美しさを見出すことができるでしょう。
モナ・オレンは、「手の賢さにささげるリリアン・ベタンクール賞®」受賞者」として、2022年に1か月ヴィラ九条山に滞在しました。
ヴィラ九条山とベタンクールシュエーラー財団との2つ目のパートナーシップとして、2022年から、毎年2人の「手の賢さにささげるリリアン・ベタンクール賞®」受賞者が、ヴィラ九条山に1ヶ月間滞在することになりました。
滞在中、彼らは自らの技を、日本文化の中で発展させることになります。
彼らは、ヴィラ九条山の従来のレジデント達とは立場は違いますが、彼ら自身で、改めて、アンスティチュ・フランセによるレジデンスプログラムに、ソロ、二人組み、またはデュオで応募することも出来ます。
ベタンクールシュエーラー財団、アンスティチュ・フランセ、ヴィラ九条山は、この新たなパートナーシップによって、より一層、フランスの工芸の普及 、そして日仏2国間での対話の促進に取り組めることを、嬉しく思っています。
Crédits photos :
Portrait : Pauline_Hervault
– Genus_2019
– Cocon I, detail, 2020
– Cocon III, detail, 2021, crédit François Talairach
– Dead Sea Project, 2019