02 2月 モナ・オレン Mona Oren
イスラエルのテルマ・イェリン芸術高等学校で学んだあと、2002年にパリ国立高等美術学院を卒業したモナ・オレン。
その発想の源泉となっているのは自然と植物界です。多種多彩な作品を生み出すこのアーティストの拠り所と言えるのは彫刻。お気に入りの素材である蝋という壊れやすい媒体が立体作品、パフォーマンス、ビデオによる再現などの形で命を吹き込まれます。モナ・オレンの仕事が問いかける
のは時間の計測、痕跡や記憶について。
「Wax Tulip Mania」においてモナ・オレンが提案するのは不特定多数の人とのコラボレーション作品。それは、デジタルマッピングを通したバーチャルなチューリップ畑のプロジェクトです。
2018年、モナ・オレンはジェローム・マルブレル(エンジニア)及びリオネル・ブルスロ(デザイナー)と共に開発したスピーカーシステム《Vertex Eidôlon/ヴェルテックス・アイドロン》で「手の賢さに捧げるリリアン・ベタンクール賞®」の「ダイアローグ」部門に入賞。これは従来の回転式モーターの代わりにリニアモーターを用いたとでも言える斬新な発想から生まれたハイテク製品で、全身を包み込むような並外れた音質を重視するため、振動膜の厚みを微妙に変化させる工夫が 凝らされています。
ヴィラ九条山での滞在中、モナ・オレンはその作品と切っても切れない蝋と塩という2つの素材をリサーチの中心に据えることになります。互いに似通ったところがあり、半透明で、代わる代わる固体とも液体ともなる、自然で、保存効果もある2つの素材の特性を通して、モナ・オレンは素材の効果を削ぐことなく少し形を変えることで、蝋と塩が備えた消滅と再出現の性質を問いかけます。
2021年にフランス貯蓄金庫の現代美術財団「エスパース・エキュルイユ」で開催された個展「Life Time」に出展された2作品「Dead Sea Project」と「Wax Tulip Mania」を継続することで、モナ・オレンは日本において伝統的な和蝋燭に対する関心を深めることになります。最終
的には、一連のコラボレーションや出会いを通して作品に蝋燭を取り入れることが塩とその神聖さを巡るリサーチと対比されることになります。
ヴィラ九条山とベタンクールシュエーラー財団との2つ目のパートナーシップとして、2022年から、毎年2人の「手の賢さにささげるリリアン・ベタンクール賞®」受賞者が、ヴィラ九条山に1ヶ月間滞在することになりました。
滞在中、彼らは自らの技を、日本文化の中で発展させることになります。
彼らは、ヴィラ九条山の従来のレジデント達とは立場は違いますが、彼ら自身で、改めて、アンスティチュ・フランセによるレジデンスプログラムに、ソロ、二人組み、またはデュオで応募することも出来ます。
ベタンクールシュエーラー財団、アンスティチュ・フランセ、ヴィラ九条山は、この新たなパートナーシップによって、より一層、フランスの工芸の普及 、そして日仏2国間での対話の促進に取り組めることを、嬉しく思っています。
Crédits photos :
Portrait : Pauline_Hervault
– Genus_2019
– Cocon I, detail, 2020
– Cocon III, detail, 2021, crédit François Talairach
– Dead Sea Project, 2019