01 12月 ベルトラン・ゴーゲ Bertrand Gauguet
ベルトラン・ゴーゲはミュージシャンにして美術史博士。2000年代初めから、サクソフォン奏者としてヨーロッパの実験・即興音楽シーンでその存在感を示しています。
また、ダンス、ラジオ、ビデオや映画のために電子音楽の作曲も手掛けています。これと並行して、サウンドアートの実技と現代美術史をライン川高等芸術学院で教えています。.
ベルトラン・ゴーゲは2011年7月から12月にかけてレジデントとしてヴィラ九条山に滞在。そのプロジェクトは仏教の教え「吹禅一如 」(吹くことと禅は一体である)をテーマとしたものでした。日本滞在中、ベルトラン・ゴーゲは師匠について尺八を習い、「本曲」(13世紀の禅僧により作られた楽曲)の教えを受け、吹禅を体験することができました。日本の文化と電子音楽シーンにどっぷりと浸った彼は、レジデンス中にセカンドアルバム『Shiro/シロ』の作曲に着手し、このアルバムは2014年に発売されました。
ベルトラン・ゴーゲは、同時期にヴィラ九条山のレジデントだった映像作家クリスチャン・メルリオに協力し、彼の監督作品『Slow Life』(ヴィラ九条山滞在中に撮影)と『Ningiuq(長女)』の作曲も行っています。
インタビュー:ベルトラン・ゴーゲ
– ヴィラ九条山のレジデンス・プログラムに参加したかったのはなぜですか?
まず、遠くに行きたかったのです。脱中心や脱日常の体験をしたかったのです。その点で、ヴィラ九条山のプログラムはこうした願望にぴったりのものでした。私の当初のプロジェクトは別の音響・音楽文化にアプローチしたいという欲求に基づくものでした。それも、サクソフォン演奏との関係で試してみたいと思っていた「吹禅(すいぜん)」を通して、これをを行いたいと思っていました。また、歩き回ることで、音を採取し、メードインジャパンのエレクトロニクス文化にどっぷりと浸かるというプロジェクトもありました。.
初めての来日でした。10代の頃から、日本とその文化には強く惹かれてきました。なかでも、雅楽、能の囃子や尺八のソロレパートリーである「本曲」など、日本の伝統音楽に関心がありました。邦楽における時間や空間との関わり方には実に独特のものがあり、これに興味があり、近づきたかったのです。また、文学、映画、庭園、料理、テクノロジーなどにも興味がありました。
–日本ではどんな音楽技法を発見しましたか? 仕事の面で変化はありましたか?
レジデンス中は、京都在住の倉橋容堂先生に就いて尺八とそのレパートリーを学びました。この楽器の演奏の仕方を習い、西洋音楽とは別の記譜法に基づく楽譜を読むことを学びました。サックスと尺八はどちらも気鳴楽器ですが、息使いはかなり異なっています。まったくかけ離れた2つの楽器文化なのです。私が面白いと思ったのは、サックスに移し換えることができるのは、尺八に特有の技法ではなく、むしろひとつの精神状態であり、特に音楽と音に対する別の考え方だということです。
ヴィラ九条山に滞在していた時、アルバム『Shiro/シロ』の作曲も吹禅の実践から生まれました。これは、サックスに関して15年ほど前から進めてきた研究を「本曲」を学ぶことで発見したものと掛け合わせる仕事でした。『Shiro/シロ』は特に音の「うなり」現象の上に組み立てられています。
– 日本滞在はその後の仕事にどんな影響を与えましたか? 今では、日本とどんなつながりを保っていますか?
「本曲」のレパートリーに取り掛かることができ、実に興味深い次元である吹禅に近づくことができました。これにより、音楽についての別の捉え方を実感することができました。
2013年9月に日本に戻る機会があり、初来日の時に知り合ったミュージシャンたちと東京で2つのコンサートをすることができました。日本とはきわめて強いつながりを保っており、この国は、その逆説的な面を通して、私に問いを突きつけてきます。日本にいるのが大好きです。
Anitya: