02 6月 エマニュエル・カレール Emmanuel Carrère
1979年にパリ政治学院を卒業後、エマニュエル・カレールはインドネシアでフランス語を教えるとともに、1981年から1986年にかけてはジャーナリストとして「テレラマ」誌のために働きました。1983年には処女小説を発表し、1986年以降は作家活動に専念。映画の脚本家・監督としても活躍しています。1986年に発表された『La Moustache(邦題:口ひげを剃る男)』は自らが映画化し、2005年のカンヌ映画祭に出品されました。一方、1995年のフェミナ賞に輝き、クロード・ミレール監督により映画化された『La Classe de neige(邦題:冬の少年)』(映画の邦題は『ニコラ』)は1998年度カンヌ映画祭審査委員特別賞を受賞しています。それ以降の小説としては『L’Adversaire(邦題:嘘をついた男) 』(2000年)、『Un roman russe(仮題:あるロシア小説)』(2007年)、『D’autres vies que la mienne (仮題:私以外の人生)』(2009年)、2011年度ルノード賞受賞作品『Limonov(仮題:リモノフ)』や『Le Royaume(仮題:王国) 』(2014年)があり、どれもP.O.L社から刊行されています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは「L’Hokagé orangé de Konoha/木ノ葉のオレンジ火影」と題され、最も有名な日本のマンガのひとつで、700話を超えるエピソードからなり、アニメ化もされた作品の主人公「ナルト」の足跡を辿るものです。エマニュエル・カレールの8才の娘ジャンヌは3年前からこのマンガの大ファン。そこで、父親の方も成長物語でもあるこの大河ロマンの魅力に取りつかれました。娘はナルトの国である日本に憧れ、父親は別の理由から日本に憧れていますが、娘の言い分こそがベストで、最も現実的で、最も生き生きしていると彼は考えています。こうしたことから、日本に滞在し、ナルトの足跡を辿るという考えが生まれたのです。
具体的には、このプロジェクトはナルトの原作者・岸本斉史が着想を得た現実の場所を見に行ったり、原作者とそのスタッフを訪ねたりするものとなります。つまり、マンガ作品が具体的にどのように制作されるのかを知り、ナルトが大好きな日本の子供、青少年や大人と語り合い、彼らの好きになり方が同じものかどうかを知ろうとする試みです。要するに、ナルトという導きの糸を辿りながら、どこに導かれるかを前もって知ることなく、日本について徐々に学んでいこうとすることになります。