01 9月 マクシーム・マティアス Maxime Matias
マクシーム・マティアスはパリ国立装飾芸術学院卒業のグラフィックデザイナーで、デザイン事務所《Rimasùu》を設立するとともに、教師も務めています。パリ市のインキュベーション施設《Ateliers de Paris/アトリエ・ド・パリ》の旧レジデントである彼は、建築家、デザイナーや工芸家などとのコラボレーションを行い、タイポグラフィ、写真、印刷技術や嗅覚アートをミックスした、分野横断的なグラフィックアートを展開しています。2022年には、パリのデザイナーと東京の匠との間の日仏交流企画《江戸東京きらりプロジェクト》に参加。マクシーム・マティアスは、正規の教育(コンデ学院パリ校、パリ東国立高等建築学院、香水・化粧品・食品香料国際高等学院[ISIPCA])やワークショップの指導(デザイン・アニメ・ゲームの専門教育機関ECVナント校 、パリ国立高等装飾芸術学院、南スイス応用科学芸術大学[SUPSI]など)を通して、後進の育成にも取り組んでいます。
形なきものを表象する
表象の問題はグラフィックアートの核心をなしています。抽象的な概念をイメージを用いることで形あるものに表現することにより、言語や記号が生み出されます。そしてさらには、私たちの日常や想像の領域にある一連のグラフィカルな要素が生み出されます。こうした論理が実践の中心に据えられた時から、マクシーム・マティアスは過ぎ去る時間の痕跡、おぼろげな記憶、匂いなど、表象することが難しい要素に関心を寄せながら、その限界を探ることに努めてきました。それは、グラフィックデザイナーの標準的なツールを超え、斬新なツールやメディアを探索するという観点に基づくものです。こうした仕事を継続する上で、日本はグラフィックツールの再定義に必要な形、色、素材の利用に関する比類なき研究フィールドとして避けて通れません。マクシーム・マティアスはこうした再定義を2つの観点から探究したいと考えています。つまり、日本のグラフィックシステムの象徴的性格と豊かさの観点、そして数年前から実践している《香道》という所作と内省の芸術の観点です。
このレジデンス・プロジェクトでは職人とのコラボレーションや香道の実践を拠り所として、表象技術の習得、独自のグラフィック形式の探究、共感覚の実験や出会いと学びを通して、種々雑多な要素からなるリサーチ資料集をまとめることが目指されます。
Crédits photos :
-©RIMASÙU
-©RIMASÙU + Shin Nakamura