02 9月 デルフィン・パニック Delphine Panique
デルフィン・パニック:バンド・デシネ
バンド・デシネ作家であるデルフィン・パニックは、2013年、グラフィックノベル「Orlando」(misma出版社)でデビュー。同作品は、ヴァージニア・ウルフ原作の「オーランドー」を大胆かつ自由に翻案したものです。2015年には第二作目となる「En temps de guerre」を発表。2016年アングレーム・国際バンド・デシネ・フェスティバルのオフィシャルセレクションに選ばれるなど、注目を集めました。その後も、「L’Odyssée du Vice」(2016年)、「Le vol nocturne」(2018年)、「Les Classiques de Patrique」(2018年)を発表。Les Requins Marteaux、Cornelius、ガリマールといった出版社から刊行され、パニック独自のデッサンスタイルと物語体を確立させました。最新の二作品である「Un beau voyage」と「Creuser Voguer」は、数々の賞を受賞し、セレクションとしても選出されるなど、高い評価を得ています。
「Choses qui perdent à être peintes」(描かれることで失われゆくもの)
デルフィン・パニックが目指すのは、清少納言による「枕草子」のバンド・デシネ化。枕草子は、日常生活の美しさを綴った随筆でありながらも、虚無で真っ白な空間に残された深い悲しみと憂鬱さも感じられる作品です。このような感情は、バンド・デシネ作家であるパニックにとって、どこか共感できるもの。パニックが目指すのは、清少納言の作品を、単にバンド・デシネとして描写するのではなく、自分の作品として昇華させるために、原作を真に感じることです。パニックにとって枕草子とは、宮中における女性という身分について綴ったもの。宮廷に仕える女性は多くの命令に縛られており、中でも社会的・地理的にも、世間から隔離されています。宮中に閉じ込められ、無為に過ごす中で、女性は自分を取り巻く自然世界に魅せられることの特権、自分の感情だけでなく、流れゆく時間にも気がつきます。この退屈さこそが、世界に対する深い意識へと女性を導いたのです。スピードばかりが重視され、人や自然を蔑む現代の不条理から私たちを救い出すための鍵となるのが、退屈さなのではないでしょうか。
Crédits photos :
Photo DP : @Editions Misma
Bruits_Delphine_Panique_small-clean : Performance festival Fumetti 2023, @delphinepanique
Lidépompier : @delphinepanique
unbeauvoyage_exterieur-34 : extrait de Un beau voyage, Editions Misma, 2023, @delphinepanique
unbeauvoyage_exterieur-34 : extrait de Un Beau Voyage, Editions Misma, 2023, @delphinepanique
Delphine2b : @delphinepanique