16 11月 スティーブン・ルプリゼ Steven Leprizé
木工作品のアトリエ「ARCA」、STLデザインスタジオの創設者であるスティーブン・ルプリゼ。新たな表現を実現し続ける彼の真髄となっているのが、そのノウハウです。AIRWOOD(膨らますことができる木材)、LARMÉ WOOD(涙のしずく型のメタルとツキ板を組み合わせた高速木工技術)、C°WOOD(高価な金型を用いることなく熱を使い成形する木材)など、新技術・新素材の開発はとどまるところを知りません。世界中のインテリアデザインのプロジェクトやラグジュアリーメゾンが、彼のイノベーションに魅了されています。パリのエコール・ブール国立工芸学校を中心に、エベニスト(木工作家)の技術を学んだルプリゼは、2008年に同校を首席で卒業。2011年からは母校で教鞭をとっています。こうした功績が認められ、数々のアート・デザイン部門のコンクールを受賞。2017年には、リリアンヌ・ベタンクール「手の知性」賞も受賞しました。
「Tandem」
木挽き職人、指物師、大工など、木を愛する家系に生まれたスティーブン・ルプリゼ。ヴィラ九条山でのレジデンスでは、木工品から家具に至るまで、日本が誇る専門技術である無垢材の木工技術の研究を行いたいと考えています。プロジェクトの一環として、日本の職人から大工技術、組み立て技術、木を読む技術、そして木の文化を学ぶために、地元の工房でのワークショップを予定しています。ルプリゼの願い、それは基本に立ち返ること。基本こそが、ルプリゼにとってイノベーションの土台となるものだからです。日本文化を肌で感じ取りながら取り組むのは、「Tandem」と名付けたプロジェクト。「バランス」と「ひとつながり」を愛しむ家具は、陰陽論にインスパイアされています。Tandemを形づくるのは、二脚の肘かけ椅子。これは、人と人との関わりを表しています。レジデンスで予定される研究は、風水、生花、書道、道教、六芒星など、多岐にわたります。日本文化を中心とする今回の旅は、コレクションという作品に形を変えてパリで終わりを迎えます。ニューヨークのヴィラ・アルベルティーヌでの経験がそうであったように、新しいコレクションの誕生は、ルプリゼのアーティストとしてのキャリアの新たな幕開けとなることでしょう。
Crédits photos :
– Portrait: © Industry city
– Rendu d’image du projet de dîplome Tandem _ ©Steven Leprizé
– © Agency for Cultural Affairs
– Agri Chapel par Yu Momoeda Architecture Office _ ©Yousuke Harigane
– Vue du pignon et du côté longitunidal du temple Todai, 1191_ ©Editions H. Vial
ヴィラ九条山とベタンクールシュエーラー財団との2つ目のパートナーシップとして、2022年から、毎年2人の「手の賢さにささげるリリアン・ベタンクール賞®」受賞者が、ヴィラ九条山に1ヶ月間滞在することになりました。
滞在中、彼らは自らの技を、日本文化の中で発展させることになります。
彼らは、ヴィラ九条山の従来のレジデント達とは立場は違いますが、彼ら自身で、改めて、アンスティチュ・フランセによるレジデンスプログラムに、ソロ、二人組み、またはデュオで応募することも出来ます。
ベタンクールシュエーラー財団、アンスティチュ・フランセ、ヴィラ九条山は、この新たなパートナーシップによって、より一層、フランスの工芸の普及 、そして日仏2国間での対話の促進に取り組めることを、嬉しく思っています。