12 9月 シモン・ニケーズ Simon Nicaise
ルーアン美術学院で学んだシモン・ニケーズはその仕事を広い意味での彫刻の分野に組み入れており、欧州における数多くの展覧会や受賞に彩られたキャリアを築いています。アートへのアクセスを行いやすくする方法を絶えず探求する営みの中で築かれたアーティストとしての実践に新しい要素をもたらしたのは、アーティスト・ラン・スペースやラジオ局の運営に携わったことであり、そこではアーティストの仕事の発信方式を一新する企画編成が行われています。シモン・ニケーズは職人が各地を巡って修業する《compagnonnage/コンパニョナージュ》という職業訓練制度から発想を得たフランス各地を巡る旅を2018年に開始し、町から町へと、また職業から職業へと、自らの活動範囲を広げる条件を整えています。2021年には、その設立に加わった現代の創作を専門に取り上げるラジオ局「radio *Duuu/デューラジオ」がピエール・ジケル賞を受賞。
タンクと酵母
レジデンス・プロジェクトのため、シモン・ニケーズは日本酒の醸造に関するリサーチと実験を中心として、精神の発酵タンクを構築したいと考えています。日本酒醸造のエコロジーと酵母に含まれる微生物が生きている環境について、さらには微生物とその環境との関係についての調査が行われます。
第1段階では、日本酒製造の技術用語を学び、材料と道具を調べ、醸造工程を観察し、発酵について調査し、日本酒の飲み方や日本酒を巡る儀式を学ぶことになります。こうしたリサーチは日本の工芸家、木桶職人、醸造家や詩人との出会いや現場での情報収集を通して行われることになります。
第2段階では、収集された情報を《発酵》させ、それが自分自身の中でどのように作用するかを観察し、こうした最初の動きと共に歩み始めることになります。
そして、搾汁の中で増殖する酵母のように、シモン・ニケーズは彫刻表現を検討しながらこうしたリサーチを続けることになります。また、こうしたリサーチには、自ら編集している雑誌「Pain Liquide/パン・リキード」と *デューラジオにおいてプロジェクトを取り上げることで、修業の旅において活用している2つのツールを組み合わせたいと考えています。
Crédits photos :
– Sans titre, 2021, Verre, 36x16x16cm, Julie Freichel
– Les trois-huit, 2021. Métal, soudure. Triptyque. Diamètre : 24cm chaque Production Zébra3
– Mobile parmi les mobiles, 2012-2016. Tiges métalliques, aimants et paquet de Gauloises 70 x 40 x 50 cm Collection Cnap/Fnac © Emile Ouroumov
– Bougie cacahuète, 2019 Cire de fonderie, 45 x 2 x 2 cm © Robin Bourgeois
– Lionnel,2018. 32 roses, cire, acier, 65 x 70 x 40 cm