01 2月 ファニー・ブシェ Fanny Boucher
ファニー・ブシェはエリオグラヴュールのスペシャリスト。粒子エリオグラヴュールとは写真と凹版画を巧妙に組み合わせた19世紀の版画技法で、金属版にきめ細やかな加工を施すことができます。ファニー・ブシェの工房 《Héliog/エリオグ》 はこの類い稀な技能を今も使いこなせる、世界でも10軒ほどしかない工房のひとつ。2000年以降、ファニー・ブシェは世界中でトップクラスの現代美術家と一緒に仕事をしています(ザオ・ウーキー、ジャン=ミシェル・オトニエル、JR、アネット・メサジェ、草間彌生、エミリア&イリヤ・カバコフなど)。
2015年にフランスの人間国宝とも言える「メートル・ダール( Maître d’Art)」に認定されたファニー・ブシェは、優れた版画や美術書の制作からインテリアデザイン向けの一点ものの注文制作に到るまで、完璧で唯一無二の特異な専門技術を提供しています。金属版に付与する革新的な次元を探し求め、ファニー・ブシェはその卓越した技能を、オーダーメイドのプロジェクトを通じて、デザインや高級ブランド品の世界にも広く提供しているのです。また、作家としての個人的な仕事は日本や中国の国立博物館でも紹介されてきました。
ヴィラ九条山では、ファニー・ブシェは透明性の美学と木枠に紙を貼った日本の半透明な「明り障子」が生み出す光の戯れを巡るリサーチ・プロジェクトを進めます。障子は動きのある淡彩画として、そこに映り込む風景の影絵芝居を見せてくれます。レジデンス期間中、リサーチの中心となるのは和紙や日本の屏風、目を惹きつけられた樹木の写真撮影、京都のアートシーンとの出会い。
これを通じて、フランスに戻ってから制作される障壁画によるトーテムを発表予定の2024年の展示会の準備が進められます。「Arboris shoji」と題されるこの作品は、「手の賢さに捧げるリリアンヌ・ベタンクール賞」の2020年度卓越した才能部門での受賞をファニー・ブシェにもたらした最初の「Arboris」と共鳴するものとなります。こdの新作により、インテリアデザイナー向けの企画提案に半透明な障子の美学を組み入れることが可能となります。
ヴィラ九条山とベタンクールシュエーラー財団との2つ目のパートナーシップとして、2022年から、毎年2人の「手の賢さにささげるリリアン・ベタンクール賞®」受賞者が、ヴィラ九条山に1ヶ月間滞在することになりました。
滞在中、彼らは自らの技を、日本文化の中で発展させることになります。
彼らは、ヴィラ九条山の従来のレジデント達とは立場は違いますが、彼ら自身で、改めて、アンスティチュ・フランセによるレジデンスプログラムに、ソロ、二人組み、またはデュオで応募することも出来ます。
ベタンクールシュエーラー財団、アンスティチュ・フランセ、ヴィラ九条山は、この新たなパートナーシップによって、より一層、フランスの工芸の普及 、そして日仏2国間での対話の促進に取り組めることを、嬉しく思っています。
Crédits photos :
Portrait : Gilles Leimdorfer
– Arboris, Fanny Boucher, crédit Edouard Elias
– Arboris, Fanny Boucher, crédit Edouard Elias
– Heliog protection recto, crédit David Meignan