08 3月 トニー・ジュアノー Tony Jouanneau
トニー・ジュアノーはデザイナー、工芸家にして研究者。2017年には、アトリエ・サムビオーシス(Atelier Sumbiosis)を設立。そこは科学とテキスタイルに関するノウハウが出会う仕上げ加工の実験工房です。微細藻類を用いた染色、虫に食い尽くされるモチーフやバクテリアによる布地のプリントなど、そのリサーチの着想源となっているのは共生(シンビオーシス)の称賛に値する原則であり、命あるものと柔軟な素材との斬新なコラボレーションが目指されています。その結果生まれるエコロジカルな素材は、美術工芸家とのコラボレーションにより刺繍、プリーツ加工、製織、マーブル柄などを用いて手を加えることで、他に類のない作品を生み出します。トニー・ジュアノーは高等教育にも携わり、国立高等工業デザイン学院(ENSCI-Les Atelier)、パリ国立高等装飾芸術学院(ENSAD)やフランス・モード研究院(IFM)などでバイオデザインの重要性を説くことにも努めています。
ECHIRO
《ECHIRO》*はソルボンヌ大学のパリ凝縮系化学研究室とアトリエ・サムビオーシスの共同研究から生まれたプロジェクト。2015年にフランス国立科学研究センター(CNRS)の研究者マリー・アルベリックにより着手された研究は、ウニの骨格と棘という活用に値する資源を用いた色素抽出法の開発と、この技術をテキスタイルの持続可能な染色技法に応用することを中心としたもの。日本は世界一のウニ消費国(年間約6万トン)であることから、《ECHIRO》は繊維に関する先祖伝来の染色技法を分子生化学の最先端の研究と組み合わせることで、日本国内でふんだんに採れるウニという素材の価値を高めることを提案します。
ヴィラ九条山でのレジデンスにおいて、《ECHIRO》のリサーチの進展は、日本文化に組み入れられた消費財産業システムをうまく利用するとともに、日本の卓越した職人技を産業界に刺激を与えることのできる有力な生産手段として用いることで、仕上げ加工の新たなノウハウの展望を可能にしてくれるかもしれません。
* 棘を意味するラテン語の《Echino》と日本語の《色(Iro)》を組み合わせたかばん語。
Crédits photos :
Portrait : crédit Lola Verstrepen
Le Paris des Talents: crédit Florent Mulot (2021)
SlowDevored: crédit Véronique Huyghe (2017)
Spirulab: crédit Véronique Huyghe (2017)
Undula: crédit Edern Haushofer (2022)