07 9月 アラン・ヴィローム Alain Willaume
アラン・ヴィロームは2010年から写真家集団《Tendance Floue/タンダンス・フルー》のメンバー。2019 年にはグザヴィエ・バラル出版が全作品から厳選された写真集「Coordonnées 72/18/座標72/18」を 刊行(2019年度ナダール 賞にノミネート)。また、2020年にはファビアン・リベリとの対談集「Un réalisme hanté/取り憑かれたレアリズム」がアルノー・ビザリオン出版から刊行されています。
フィクションは現実の裏側ではなく、現実のひとつの様態だと考える写真家アラン・ヴィロームは、社会参加と神秘性を対立させることなく、むしろ反対に、効果的であるために騒ぎ立てる必要のない形式に双方を統合しています。この写真家の寡黙なイメージは思考と言葉を導き出します。形式の飽くなき実験家であるアラン・ヴィロームは、時流から離れて、謎めいたイメージからなる作品を展開しており、そのどれもが物語っているのは世界と人間の緊迫感であり、脆弱さです。
亀裂、断層と断片(仮題)
アラン・ヴィロームは自らの仕事を《侘び寂び》の概念に依拠させたいと考えています。二面性を備えたこの日本の《哲学》は、過ぎ去る時の作用を自然を前にして感じられる充足感、謙虚さやさらには哀愁に結びつけています。古くはあるが、今までになく現代的なこうした美的概念は、日本文化に脈々と流れています。また、写真家のビジョンに新しい解読の鍵をも提供してくれます。
現代の産業災害や環境災害はかつては馬鹿にされていた一連の概念を蘇らせました。例えば、脆弱性、質素さ、脱成長といった概念です。こうした世界の新しい状況の陰で、《侘び寂び》の観点は私たちを不完全なものの美しさというパラドックスに直面させます。写真家アラン・ヴィロームはこの概念の奥深さをその源泉に立ち戻って研究したいと考えています。彼の作品は意味の曖昧さ、形式のずれや形式上の不完全さを故意に宿しています。こうした距離の意識と影に対する興味は、彼の芸術的アプローチを端的に示すと同時に、問題提起に適した《曖昧な領域》 – 知識を阻むことなく、むしろ知識を広げてくれる領域 – に対するアラン・ヴィロームの関心を説明するものかも知れません。
Crédits photos :
Portrait: ©Meyer _ Tendance Floue
1- Alain B dans le bus. Strasbourg. 1973. © Alain Willaume / Tendance Floue
2- L’hésitant. St Petersbourg. Russie. 2004. © Alain Willaume / Tendance Floue
3- Série « Les Invisibles ». Séville. Espagne. 2007. © Alain Willaume / Tendance Floue
4-Série « Échos de la poussière et de la fracturation ». Région du Karoo. Afrique du sud. 2012. © Alain Willaume / Tendance Floue
5- La main de Z. Série « Insomnies ». Venouse. 2018. © Alain Willaume / Tendance Floue