26 12月 ナタリー・アズーレ Nathalie Azoulai

高等師範学校を卒業し、近代文学のアグレジェ(上級教員資格者)であるナタリー・アズーレは小説、戯曲や子供向け絵本など8冊の著作を発表。
小説家としての活動を始める前には、まず教師を務めたあと、編集者に就きました。これと並行して映画、テレビやラジオ放送の脚本制作に携わった経験により、書くことと言語に対する強い関心を確たるものにし、多様化させました。2002年に出版された最初のテクストである『Mère agitée/落ち着きのない母親』では、妊娠・出産に直面する若い女性の日常生活の断片が描かれ、批評家たちの注目を集めました。
2005年発表の小説『Les Manifestations /デモ』では、1980年代から2000年代にかけての政治の大きなうねりを背景として、20年来の友人関係が試練に晒されます。これと並行して、ナタリー・アズーレはパリ政治学院や情報通信科学高等研究学院(Celsa)のほか、ガリマール社発行の文芸雑誌「新フランス評論(NRF)」においてライティング・ワークショップの企画・指導に携わっています。2015年には、ラシーヌの代表的悲劇を巡る小説『Titus n’aimait pas Bérénice/ティトゥスはベレニスを愛していなかった』の発表により、ナタリー・アズーレはメディシス賞を獲得。
その後、『Les Spectateurs/観客たち』『Clic-Clac/カチッ・カチャッ 』の小説2作のほか、独白劇『En découdre/言い争う』を発表し、この戯曲はパリのロンポワン劇場で上演されることになっています。
Glu/グリュ
『Glu/グリュ』というのが、ナタリー・アズーレがヴィラ九条山でのレジデンス中に手がける新しい執筆プロジェクトのタイトル。この物語は私的な調査として企画され、そこでは日本が、何度かの来日経験と小津安二郎の映画を背景として、見守り役を果たすことになります。
母と娘の間で交わされる信じられないような対話が近くと遠くを、身を持ち崩した子供と死に瀕する母親の元へのその帰還とを絡まり合わせ、すべては愛情と日本が重なり合った形でメリハリがつけられることなります。
幼少期から服喪に至るまで、このテクストが目指すのは親子関係を突き動かす愛着と無頓着の動きを追うことであり、ひとりの大人の教育プロセスと解放が描き出されます。
この通過儀礼を、ナタリー・アズーレは風景や映画だけでなく日常生活の光景に目を向けることで、豊かなものにし、浮かび上がらせようとします。