13 1月 アンヌ・ルトロテール Anne Le Troter

アンヌ・ルトロテール (1985年生まれ)は、パリを拠点とするアーティストであり、音響インスタレーション、パフォーマンス、演劇、文学、詩を融合した作品を制作しています。
『物質の百科事典』と『クレール、アンヌ、ロランス』の2冊の本を執筆後、彼女は仕事における「発言」の重要性に取り組み始めました。このようにして、アンヌ・ルトロテール は、ASMRアーティストや電話調査員のようなグループの人々を招待し、一緒に録音を行います(『L’appétence』オーディオ作品、2016年サロン・ド・モントルージュとパレ・ド・トーキョー賞、『Les mitoyennes』La BF15、2015年、『Liste à puces』パレ・ド・トーキョー、2017年、『Les silences après une question』ヴィルールバンヌ現代美術館、2017年)。

ペルノ・リカール財団、レンヌ・ビエンナーレ、サン・ナゼールのル・グラン・カフェ、ダラスのナッシャー彫刻センター、ポンピドゥー・センターに招待され、彼女はその後、人間の繁殖方法についての、伝記、フィクション、ユートピアを中心とした執筆サイクルを開始します。2021年には、ベトンサロンおよびADAGPの奨学金(Les Volontaires、pigmentsmédicaments、Bétonsalon、centre d’art et de recherche、2022)、また、モンド・ヌヴォー・プログラムの受賞者となりました。
レジデンスの後半でアンヌ・ルトロテール は、日本の詩人・音響アーティストである足立智美、山崎阿弥、ふくだぺろを招待し、共に、自称日本初のダダイスト、放浪者、自己中心主義のアナーキスであった日本人アーティスト、辻潤の作品にインスパイアされた新しいオーディオ作品の制作に取り組みます。
『Romance du vagabond』と『L’illusion de la grotte à roulettes』を読んだ後、アンヌ・ルトロテール は、3人の主人公が現状の維持を拒否し、社会から抜け出すことを決意し、森に回帰する文書の執筆を開始しました。こうして、辻純の作品と関連するディスカッションが生まれます。
たとえ役に立つことになっても、私は特に犬用のおもちゃになりたい。だから、私は垂直性を拒否し、現状のままで居続けている。なぜなら、私が大好きなのは犬用のおもちゃになることかも知れないから。それが私の得意かも。そう、私はまず空中に舞い上がりたい。想像してみて、誰かが私を投げて、刈られたばかりの草原の上を滑空させるの。そして、次に、私は落ちて切り株に顔をぶつけたあと、口に、犬の口に咥えられるの。
決して中に入らず、決して前に進まないこと。私はブレーキをかけ、停止する。私は後ずさりすることなく、居続ける。私は犬のおもちゃ。言葉に関しては完全に不動で、私はもはや喋らない。私は犬のおもちゃで、思考を停止する。私の声は冬眠し、半開きの唇は凍りつき、2つの白い山を出現させる。私は話さない、面倒だ、口を開くのも面倒だ。ただ面倒なだけ。びっくりさせられる。それは素晴らしかった。そしてホットだった。犬のおもちゃ。そう、犬があなたに飛びかかり、あなたを押し倒し、ポンポンをついばむのを想像してみて。犬は私のお腹をくちゃくちゃ噛んで、お腹は突然、ピーピーと音を出し始める。犬が私の髪をかじりだすと、私は犬の鼻先をくすぐる。私はあちこち噛みつかれ、欲望と快楽に傷つきたい。分かるかな、これこそ孤独とは正反対、私にとってはね。
あなたが犬のおもちゃである時、あなたが引き起こす欲望の度合いを考えられる? あなたが体現する喜びのパーセントが分かる? このグラフには確かにピークがあり、欲求の山や必要の泉があり、大きな利益をもたらすかも知れない。これは、経済全体を見直すというか、いやむしろ投資すべき問題だ。大きな賭けをして、ピーピーと音を立てるモノに思い切って生まれ変わり、ど真ん中に、欲望のど真ん中に完全な破壊に至るまでとどまること。そういう計画。