02 6月 アントワーヌ・ヴォロディーヌ Antoine Volodine
アントワーヌ・ヴォロディーヌという名前はあるフランス人小説家が用いている複数のペンネームのひとつで、最も愛用しているものです。ロシア語と近代文学の学士号を取得した彼は、小説『Des anges mineurs』(邦訳『無力な天使たち』)で1999年度ウェプレール賞を、『Terminus radieux』で2014年度メディシス賞を獲得。アントワーヌ・ヴォロディーヌは自らの小説を《ポスト・エグゾティスム》というジャンルに組み入れています。これにより、従来の文学・イデオロギーとの断絶を表明するとともに、現代史との関係で自伝的冒険を重んじようとしています。マカオで暮らした経験から、極東の影響が既にいくつかの作品に色濃く表れています。また、邦訳された小説もいくつかあります。
ヴィラ九条山でのレジデンス中、アントワーヌ・ヴォロディーヌは新しい小説のためのリサーチ活動に取り組むことになります。以前から日本の古典文化やその美意識、日常生活における仏教の現代的な応用やカルト集団の常軌を逸した行動に関心を寄せているほか、日本のナショナリズムの特殊性など、より的を絞った問題にも興味があります。日本滞在中、ヴォロディーヌは仏教・神道の儀式を理解することに努め、それを《ポスト・エグゾティック》な小説の構成の中に取り入れたいと考えています。レジデンス生活により、宗教・世俗の両面から、日常における日本の現実と長期に渡り繊細に向き合うことになります。