26 12月 フロール・ファルシネリ Flore Falcinelli
フロール・ファルシネリはかなり早くから漆に対する関心を育みました。
2011年にはオリヴィエ・ド・セール国立高等応用芸術工芸学院(ENSAAMA)に入学し、この素材を専攻。フロール・ファルシネリの仕事は草花や動物に溢れた世界に焦点をあてたもので、漆という素材が自然で有機的な世界と織り成す関係から自ずと着想を得ています。2018年には京都市とパリ市の共催プロジェクト《Savoir-faire des Takumi》に参加し、欧州と日本の漆芸のつながりをさらに理解したいという思いを新たにしました。
アジアの漆をヨーロッパで模倣するために当初生み出された技法である《ヴェルニ・マルタン》(vernis Martin)に精通したフロール・ファルシネリは、日本の職人に特有の漆の技法を特に用いている現代アーティストとの出会いを望んでいます。
その目的は、こうしたアーティストたちのアプローチを十分に理解するとともに、繊細なやり取りを通して、日本ではほとんど知られていない欧州における漆とその技法を知ってもらうことにあります。
漆芸の痕跡:漆とヴェルニ・マルタン
ヴィラ九条山では、フロール・ファルシネリは脱活乾漆造の技法を調査検討します。これは強度と繊細さを併せ持ったオブジェを作り出す技法で、素材からオブジェへの比類ない移行を可能にしてくれます。
立体作品に興味のあるフロール・ファルシネリにとって、この技法は自らの仕事をフォルムに向け直し、作品に空間概念を取り入れることを可能にするものです。また、この若手アーティストにとって、こうした造形作業は日本の歴史・宗教に深く根差したこの技法を巡って、漆芸家との豊かな出会いを実現する機会ともなります。