02 6月 トマ・ブーヴェ&太田宏 Thomas Bouvet et Hiroshi Ota
基礎物理学の修士号を有するトマ・ブーヴェは2002年に俳優養成学校《クール・フロラン》に入学しました。2011年からはパスカル・ランベールの演出助手を務め、『Clôture de l’amour/愛の終焉』 『Memento Mori/死を忘れるな』や『Répétition/稽古』などの作品に協力しました。2006年には劇団《Def Maira》を設立し、いくつかの作品の演出を担当。2008年から2009年にかけてのシーズンには国立演劇センター《コメディ・ド・ランス》の養成コースで、2010年からは身体表現養成ラボラトリー(LFTP)で指導にも当たっています。トマ・ブーヴェは演劇の中に世界を問い掛け、独自の空間と時間を作り出す新しい方法を見出しています。そこでは、様々プロジェクトを通して出会った役者たちの協力と信頼を得て、観客は演劇と積極的に対話を交わす相手だと位置付けられています。
京都の同志社大学商学部を卒業したあと、太田宏は2007年に劇団「青年団」に入団。設立者である平田オリザの戯曲を中心に上演しているこの劇団は、パリと東京で2回に渡って日仏合同公演を行っています。
ヴィラ九条山での2人1組のレジデンスは『Larmes/涙』と題された戯曲の創作をプロジェクトとするもので、太田宏が主役を務めることになります。このコラボレーションのきっかけとなったのは、歌舞伎や能を始めとする日本の演劇と振り付けに対するトマ・ブーヴェの関心です。戯曲『Larmes』の主人公はチェーホフの『桜の園』の登場人物フィールスから着想を得たもので、レジデンスに先立って執筆されたテクストを巡る2人のやり取りと舞台での実験を通して、芝居作りが行われることになります。このテクストにおいては、言葉はコミュニケーション、動きやリズムそのものであろうとし、舞台での実験を導くことになります。