17 5月 KODOMO NO KUNI 日本における遊び場に関する KODOMO NO KUNI 日本における遊び場に関する

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今回の3展連続企画展 『Kodomo No Kuni』(ヴェリジ・ヴィラクブレ市オンド芸術センター、ミクロ・ オンド「Kodomo No Kuni-Enfance et aires de jeux au Japon (日本における子供時代と遊び場)」 、ヴェルサイユ市ラ・マレシャルリー「Kodomo No Kuni-Mémoire et enfance au Japon (日本におけ る記憶と子供時代)」、ダンケルク市FRACグラン・ラルジュ-オー=ド=フランス「Kodomo No Kuni- Replay (リプレイ)」)では、2010年にオンド芸術センター(「遊び場-Contre-emplacements」展)お よびカンペ-ル市地域芸術センター(「遊び場-la police ou les corsaires (警察か私掠船か)」展 )で先に開催された連続企画展『遊び場』を手引きとしつつ、日本人の現代アーティストの作品を中 心をしたセレクションを紹介する。「Kodomo No Kuni」は、この実在する歴史的な場所、こどもの国 であり、戦争とその後の復興、そして様々な時代の遊び場の「澱」を凝集させたテリトリーであり、 つまりは「遊び場」と「記憶」というオブジェとテーマを用いてアプローチが可能な、メタファーに 富んだ場所なのである。

コミッショナー:ヴァンサン・ロマニー

KODOMO NO KUNI ENFANCE ET AIRES DE JEUX AU JAPON

オンド芸術センター ミクロ・オンド (ヴェリジ・ヴィラクブレ市)

会期:2018年4月7日-6月30日

出展アーティスト:藤澤かすみ、ル・ジョンティ・ギャルソン、木頭富士夫、イサム・ノグチ、小野規、笹原 晃平、仙田満、SHIMABUKU、副田真由、コンスタンス・ソレル、竹浦曽爾、津田睦美、山門洋平 オンド芸術センターで開催される「Kodomo No Kuni-Enfance et aires de jeux au Japon (日本にお ける子供時代と遊び場)」展では、日本の子供の遊びを何点か紹介するとともに、アーティスト SHIMABUKUによって撮影された子供たちのの自然な遊びの映像、ジュリアン・アムルー(別名ル・プチ ・ギャルソン)による紙芝居(自転車で運搬可能な劇装置で、公園で子供たちに紙に印刷した場面を見 せながら物語を語る)、日本で最も重要な遊び場のデザイナーである仙田満氏が1976年にデザインし た遊び場「パネルトンネル」の復元、さらに笹原晃平氏によりビニール傘で制作されたサイト・スペ シフィックアート作品を一挙に展示する。 また、山門洋平氏の音源作品により遊び場の雰囲気を伝えその歴史に言及し、さらに仏人若手アーテ ィスト、コンスタンス・ソレルの繊細でポエティカルな作品も紹介する。さらに京都造形芸術大学で 小野規が行ったゼミ活動の一環で、藤澤かすみ、副田真由、竹浦曽爾ら3人の学生たちによって実現 された写真作品は、2016年に京都のアンスティチュ・フランセにて、「京都児童公園プロジェクト」 の名で展示されたものである。彼らの作品は、日本では至る所で見られるこれらの児童公園(遊び場) が醸し出すノスタルジーを観る者に与えようと試みる。小野規の写真作品に関しては、津波により折 り曲げられた遊び場と、数年後に再建された新たな遊び場を紹介してくれる。 最後に、ニューカレドニアで10年以上の研究調査の末に実現され、FRACアルザスによってこの度取得 された津田睦美氏の写真作品の大規模なコレクションを本展で紹介出来る事は、私たちにとって大き な喜びである。津田氏の作品は、ニューカレドニアの鉱山に出稼ぎに来た日本移民の子孫の歴史を辿 る貴重な資料である。彼らは現地のカナク族の女性を妻に迎え家庭を築いたが、真珠湾攻撃が起こっ た後、フランス政府によってオーストラリアの強制収容所に送られた。多国間協定により彼らは戦争 終結時に日本に戻る事ができたが、子供たちと連絡を取る事はついに出来ないままであった。「社会 労働家」として活動した後、津田氏は、彼らの歴史をアートを通じて読み解いていく事を提案する。

KODOMO NO KUNI MÉMOIRE ET ENFANCE AU JAPON

現代芸術センター、 ラ・マレシャルリー (ヴェルサイユ市)

会期:2018年5月17日-7月8日

出展アーティスト:羽仁進、Yusuké Y. OFFHAUSE ラ・マレシャルリー芸術センターで開催される「Kodomo No Kuni-Mémoire et enfance au Japon (日 本における記憶と子供時代)」展では、Yusuké Y. OFFHAUSE制作の未発表作品と、1954年制作の羽仁進 監督の映画「絵を描く子供たち」の2作品が対比され展示・上映される。芸術を変革しようとする試 みに常にインスピレーションを与えてくれた子供の想像力の神秘を通して、歴史を振り返ってみる機 会を与える2作品である。 アーティスト、Yusuké Y. OFFHAUSEは、「Asobiba Reactivated Memories」と名付けられた、遊具の フォルムをモチーフにした20点のセラミックの彫刻作品の未発表のサイトスペシフィック インスタ レーションを出展。記憶だけを頼りに制作を行った彼の作品は、コピーというよりはむしろ記憶のモ デル化であり、セラミックの彫刻は、遊具のフォルムというより記憶作業によるデフォルメを呈して いる。彼は、「欠陥から、ある種のオリジナリティが生まれる」事実に注目し、陶芸家の仕事におけ る不慮の事態に新たな意味付けをしようと試みる。セラミックの彫刻は進入可能な巨大な台座の上に 展示され、典型的なジャングルジム(フランスでは「リス小屋」と呼ばれる)のフォルムを再現しよう としており、大きな遊具の構造体として記憶を物質化させたものである。そしてその内部には思い出 が整理されているのだ。見る者の使命は欠けている部分をどうにか埋め合わることである。それは羽 仁氏の映画がインスピレーションを与える、メランコリー本来の作用なのだろうか? 羽仁進氏の映画「絵を描く子供たち」は、多くの点で歴史的名作と言え、フランス語の字幕付きでこ の映画を上映できる事は大変光栄なことである。教育省の依頼により、羽仁進氏は造形美術クラスの 子供たち、彼が1958年に書いた著作の一つのタイトルを借りるなら、「演技をしない俳優たち」を至 近距離から撮影し、子供たちの作品をそれぞれの体験と関連付けて理解しようと試みた。羽仁氏の作 品は、展覧会開催期間中20回の上映が予定されている。 さらに、こどもの国公園でイサム・ノグチと「メタボリズム」建築集団が実現させたプロジェクトの オリジナル図面の未発表の複製作品が交互に展示される予定である。

KODOMO NO KUNI REPLAY

FRACグラン・ラルジュ オー=ド=フランス (ダンケルク市)

会期:2019年1月26日-3月24日

出展アーティスト:(1)(2)展覧会出展アーティストと同様藤澤かすみ、ル・ジョンティ・ギャルソン、木頭富士 夫、イサム・ノグチ、小野規、笹原晃平、仙田満、SHIMABUKU、副田真由、コンスタンス・ソレル、竹浦曽爾、 津田睦美、山門洋平 「Kodomo No Kuni」展のため、FRACグラン・ラルジュ-オー=ド=フランスは、遊び場デザイナーの 仙田満(1941年生まれ)氏から、彼が1976年に制作した遊び場「パネルトンネル」を取得した。 パネルトンネルは、真ん中が幾何学模様に切り取られた18枚の鮮明な色彩のパネルを繋げ、その中を 子供たちが通り抜けるに従いトンネルを作っていける遊び場である。遊び場は、時が経つにつれ、ま た安全ルールの変化によりもう使用は出来ないもののそのデザインは非常に優れている。 仙田満は、メタボリズムのメンバーである建築家菊竹清訓のアシスタントだった時代、子供の国公園 で林間学校用の宿泊施設建設プロジェクトの指揮を務めた。故に、イサム・ノグチの最初の作品であ る遊び場を彼が制作するのを、じっくりと観察する事ができた。その後、仙田は日本で最も重要な遊 び場のデザイナーとなり、また著名な建築家として日本の国内外に広く名前が知られている。西洋美 術を知らず、当時の日本芸術(70年代はアートにおいても環境問題が注目され始めた時代だった)とも 接点を持たなかったにもかかわらず仙田は、芸術作品と共通するような多くの優れた美的特長を持つ と言える驚くほど多くの遊び場を制作した。つまり、応用可能で、楽しめる遊び場は、GRAVの実験的 研究や、さらにはカプローのハプニングなどに匹敵する程の創意に溢れているのである。これらの遊 び場には、子供たちに提供する空間についての仙田氏の研究もさることながら、戦時中アメリカ軍に よる空爆から身を守るため横浜の丘陵の下に掘られた防空壕の中で遊んだ彼の子供時代の思い出も色 濃く反映されている。今日、芸術作品となった遊び場、パネルトンネルは、変わらず子供たちの遊び と想像力を刺激し続ける。 ヴェリジ・ヴィラクブレ市オンド芸術センター、ダンケルク市 FRACグラン・ラルジュ-オー=ド= フランスでの展覧会でこの作品を展示できる事は、非常に誇らしい事である。