13 1月 オレリー・ペトレル&ヴァンサン・ルーマニャック Aurélie Pétrel et Vincent Roumagnac
この二人組は、写真と演出の対話を追求しています。
2012年からオレリー・ペトレル(視覚芸術、写真)とヴァンサン・ルーマニャック(演劇)は展示空間の内部で作用する、配置を繰り返し動かし直すインスタレーションや写真を用いた空間構成を企画。展示作品は、写真オブジェやその他の構成要素が次々と配置換えされることで、潜在期と空間的再配置の間で変化を遂げていきます。
その結果、ハイブリッドなインスタレーションが生み出され、それは不明瞭な時間性を備え、静止画と絶えず動き続けるパフォーマンスによる彫刻が入り混じったものとなっています。
この2人組は、いくつかの展覧会やイベントを通して、視覚芸術の世界(ドイツの《Biennale für aktuelle Fotografie 2017》、ポンピドゥーセンター40周年記念/パフォーマンス・デー、現代アートセンター《フェルム・デュ・ビュイソン》・イル=ド=フランス地方写真センター[CPIF]/2017年、ヘルシンキ現代美術館《Kiasma》/2016年)とパフォーミングアーツの世界(国立演劇センター《コメディ・ド・カーン》/2015年, ジュネーブのユジーヌ劇場/2015年、ヘルシンキの現代ダンスセンター《Zodiak》/2013年)の間を行き来しています。
2人の作品を取り扱っているギャラリー・ヴァレリア・セトラロ(パリ)では2016年と2018年に個展(2人展)を開催。
写真を用いた空間構成によるエクーメン第3部 /京都エピソード
ヴィラ九条山では、オレリー・ペトレルとヴァンサン・ルーマニャックの2人組は、アーシュラ・K ・ル=グウィンのSF小説『闇の左手』(1969年)を写真を用いた空間構成により翻案するという劇作的仕事に対応した三重のリサーチを行います。
このリサーチによりまず呼び出されるのは、日本のSFにおける雪と氷に覆われた世界、そして日本のサイバーパンク。これには、(欧米における傾向との対比による)1970〜80年代におけるこのサブジャンルの出現から、漫画家・弐瓶勉の作品をはじめとする最新の傾向までが含まれます。次に、日本における透明性の現象に関心を寄せており、建築・造形・舞台の歴史における不透明さと光学的要素との戯れあいに焦点をあてつつ、関西のガラス/鏡工芸の現場へのアプローチも行います。
そして、白という色が彼らのリサーチの第3の対象となり、日本文化におけるこの色の意味合いや用いられ方が検討され、特に歌舞伎で伝統的に用いられている《白粉》に焦点があてられます。
レジデンスの後半では、レジデンスの建築に呼応した舞台セットとヴィラ九条山を取り巻く山々(鞍馬山と愛宕山)において、写真を用いた空間構成作品第3作目の演出が手掛けられます。この演出作業は、シモ・ケロクンプ(振付家)、ナジ・ジアニ(仮面/パフォーマンス)や来日時に出会った日本のパフォーマーたちの協力を得て、映像の形で記録されることになります。
その後、この映像は写真オブジェに転換され、写真を用いた空間構成作品『エクーメン』の最終章の筋書きが構成されることになります。この作品は2020年秋に完成の予定です。