17 3月 ソルギー・リー Seulgi Lee

ソルギー・リーは常に不条理なもの、根本的なものやリスクに惹かれてきており、その結果、本質的に抵抗としてのユーモアの形態が生み出されています。ソルギー・リーは職人仕事のなかに存在するメカニズムを問いかけ、さまざまな文化に通底する原初的動作の対応関係を、その集団的次元を検討することで、見出そうとしています。
このアーティストは特に3つのプロジェクトを展開してきました。まずは、韓国の伝統的キルトである《ヌビ》の職人たちとの共同によるシルクのベッドカバーのプロジェクト。次にメキシコの辺鄙な村における籠細工組合との共同による《テナテ》と呼ばれる籠のプロジェクトでは、消滅の危機にある土着言語イチャテコ語もテーマに盛り込まれました。そしてモロッコのリフ山地の女性陶芸家とのコラボレーションによる、言語体系と職人仕事の間の関係を探るプロジェクト。
ヴィラ九条山でのレジデンス期間中、ソルギー・リーは秋田音頭という、女性によって歌い継がれ、その痕跡は17世紀にまで遡って辿ることのできる民謡について知っている人たちに会いに行く予定です。これと並行して、簾職人とのコラボレーションも考えられています。簾は、神話にその起源を見出せるとも言われ、細く割かれた竹を絹糸で結び合わせた一種のブラインドです。また、金沢の展示スペース《Keijiban》におけるプロジェクトでは、キュレーターのオリヴィエ・ミニョンと組み、眼差しの歴史も探求することになります。
ソルギー・リーの仕事は何回もの個展で紹介されてきました。パリのギャラリー《ジュス・アントルプリーズ》、ブリュッセルのギャラリー《メンデスウッドDM》と仁川(インチョン)アート・プラットフォームでの「SLOW WATER」展、ポルトガル・アルマダの現代アートセンター《Casa da Cerca》での「WE ARE NOT SYMMETRICAL」展、フランス・レンヌの現代アートセンター《ラ・クリエ》での「LE PLUS TÔT C’EST DEUX JOURS MIEUX/早ければ早いほどよい」展、ソウルのギャラリー現代での「DAMASESE」展などです。また、デンマークのオーフス現代美術館、サンフランシスコのカディスロ財団、フランス・アルトキルシュのアルザス地方現代美術基金(CRAC)、光州ビエンナーレやパリのパレ・ド・トーキョーでのグループ展でも作品が発表されています。ソルギー・リーはソウルの韓国国立近現代美術館におけるプロジェクト「DONG DONG DARI GORI」で2020年度の韓国美術家賞を受賞。同美術館はレジデンス中にソルギー・リーが進めるリサーチ活動の後援も行っています。
韓国美術家賞振興基金、SBS 財団および韓国国立近現代美術館の後援によるプロジェクト。
Crédits photos:
Portrait: à Bobo dioulasso
– Prod. IDO, Prod evento Bordeaux
– Slow Water, prod Incheon Art Plateform, courtesy Gallery Hyndau
– à la gallery Hundai Vogue Korean
– Vache nez